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あさひのよろい

あさひの鎧

国枝 史郎

「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页

青空文庫

枯れ木、枯れ草、馬糞、牛糞、獣皮、獣骨、髪の毛などによって、出来あがっている燃料であった。

炭のような煙りが炉の口から吹き出し、湯気が釜からひときわ立った。

が、釜は鳴らなかった。

時がズンズン経って行く。

煙りと湯気とは束となって蜒り、莚の隙から出て行った。

が、それとは反対の方へも、煙りの束が出て行った。

そっちにも口はあるものと見えた。

突然姥が立ち上がり、壇から床へ下りる姿が、巨大な御幣さながらに見えた。

「駄目じゃア――ッ」

と、姥は吼え声を上げた。

釜のまわりを馳け巡りながら、つづけざまに姥は吼え立てた。

「贄が不足じゃ! 受けてくださらぬ! ……叩っ込め男を! 叩っ込め女を! ……人柱じゃ! 人間の贄じゃ! ……可哀そうだが人身御供じゃ! ……範覚ウ――ッ」

と、範覚の前へ立った。

「連れて来オ――ッ、贄を! 人間の贄を!」

この時女の叫び声が、どこからともなく聞こえて来た。

「助けて――ッ」という声であった。

垂れている荒莚の向こうの部屋から、聞こえて来る声とは思われなかった。

反対の方から来るようであった。

この部屋を充たしている煙りや湯気が、莚の垂れている方とは反対の方へ、やはり束をなして流れて行ったが、その方角から来たようであった。