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あさひのよろい
あさひの鎧
国枝 史郎
「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页
そう、そっちにも通路があった。
いわば、この洞窟の間道なのであったが、その間道の暗黒の中を、無我夢中で走りながら、時々「助けてえ――」と叫びながら、今浮藻は走っていた。
気絶させられた!
蘇生した!
と、恐ろしい光景が、猪小屋の周囲に展開っていた。
恐怖が彼女の心を搏ち、ほとんど思慮を失った。
(逃げなければならない! 遁がれなければならない!)
で、いわゆる盲目滅法界に、浮藻はその場を遁がれたのであった。
と、行く手に洞の口があった。
で、そこへ飛び込んだのであった。
背後から小次郎が追って来たことも、彼女はまったく知らなかった。
暗い、細い、洞窟の道を、ただ彼女は先へ先へと走った。
「助けて――ッ、助けて――ッ」
突然浮藻は光にうたれた。
「あッ」
と、叫んで立ち止まった。
巨大な釜が湯気を吐いている。
燈明の灯がともっている。
炉が真紅に燃えている。
白衣の老婆と、山伏と、二人の賎民のような男とがいる。
悪臭! 煙り! 獣の死骸!
地獄だ! 絵で見た地獄の光景だ。
「助けて――ッ」
と、恐怖を新たにし、浮藻は叫んで、ガタガタ顫えた。
と、老婆が吼えるように叫んだ。