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あさひのよろい
あさひの鎧
国枝 史郎
「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页
「これ」
と、男女へ声をかけた。
「何者じゃ、身分を宣れ!」
「云わぬよ」
と、小次郎は平然として云った。
叡山の裏山でのあの事件後、浮藻を助け出して事情を聞くと、飛天夜叉の桂子が、自分を恋し愛するあまりに、浮藻を迫害したという。
(このまま帰ったら桂子様が、何を浮藻に仕掛けるかもしれない。旅へ出てしばらく鋭鋒を避けよう)
で、小次郎は浮藻をつれて、あてのない旅へ出たのであった。
あしかけ三月の日が経った。
日数はわずかではあったけれど、浮世の相は、いちじるしく変わった。
宮方と武家方との確執が、合戦という形をとって、露骨に表面へあらわれて、世が殺伐となったのである。
こうなってみると小次郎も浮藻も、安閑と旅などにいられなくなった。
それに、おそらく桂子たちは、宮方に従いていずれ様々、画策していることであろう。心もとなく気にかかる。
で、二人は京都へ帰り、桂子の館へ行ってみた。
赤坂の方へ行ったという。
そこで二人は赤坂をさして、こうして旅をして来たのであった。
「宣らぬというか、不敵な奴め!」
陸奥守は憎々しく云ったが、
「汝らどこへ行こうとしたぞ? 赤坂であろう、赤坂の城へ!」