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あさひのよろい

あさひの鎧

国枝 史郎

「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页

青空文庫

と桂子は云った。

「岩壁の背後に何があるか、やっとわたしには見当がついたよ」

「何があるのでござりましょうかな?」

「野武士たちの巣窟があるのだよ」

「それに相違ございません」

と、風見の袈裟太郎が合槌を打った。

「それも大掛かりの巣窟が」

「面白い出来事にぶつかりそうだよ、さあ中へはいってみよう」

そこで三人は岩壁に添って、左側の方へ行ってみた。

岩壁につづいて平行している、山の斜面から灌木の枝葉が、こんもり外側へはみ出しているので、正面から見るとそんな所に、道などありそうにも思われなかったが、行ってみると細い道があった。

その道を通って進んで行った。

すぐに岩壁の内側へ出た。

と、そこに番小屋があって、得物をたずさえた武士が数人、守衛のように立っていた。

「これお前たちは何者だ?」

と、その中の一人が声をかけた。

三人は意外な厳重さに、ヒヤリと心を冷たくしたが、気転の利く袈裟太郎が進み出て、

「わたくしどもは東城の百姓、山へ枯れ木とりに参りましたところ、いつか道に迷いまして……」

「なるほど」

と武士は頷いたが、

「それで鉞など持っているのか」

と、右衛門が持っている自慢の品へ、苦笑しながら指さした。