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あさひのよろい
あさひの鎧
国枝 史郎
「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页
「へい、さようでございます。枯れた大木などあの大鉞で、切り倒すのでございます」
「ここがどこだか知っているか?」
「存じませんでございます」
「はいったが最後出られない処だ」
「…………」
「漢権守様のご領地じゃ」
(まあ)
と桂子はそれを聞くと、心の中でそう思った。
(有名な漢権守の領地なのか。……恐ろしい処へ来てしまった)
漢権守はこの時代における――いやずっと上代から、そうしてずっと後世にまでも、謎の人物として恐れられ、また憎まれている怪物であった。
漢という姓が示しているとおり、これの祖先は漢土の帰化人で、その主長の一人には、飛鳥朝の大立て者、蘇我入鹿と結託し、わが国の朝野に大勢力を揮った、有名な漢直がある。
が、大化の新政が成って、蘇我氏一族が滅ぼされるや、漢氏もことごとく勢を失い、一族四方へ流遇し、その一派は武蔵へ流れ、これは高麗の帰化人であるところの、背奈氏と合してその土地に住み、他の一派は京都洛外の、太秦辺に住居して秦氏の一族と合体したりしたが、宗家は代々摂津、和泉、河内、この三国に潜在して、勢力を揮ったということである。
その職業とするところは、野武士や賎民の頭として、それを部下とし養って、合戦ありと聞き知るや、勝ちそうな大将の陣へ行って、我らお味方いたすによって、これこれのご褒美いただきたいと云い