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あさひのよろい
あさひの鎧
国枝 史郎
「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页
の近くにいて、守護するように思われてならなかった。
盲目の頼春にはその巻軸に、何が書かれてあるものかは、まったく知ることが出来なかった。
時々その巻軸を人に見せて、読んで貰おうかと思うこともあったが、それが何んとなく非常に大切な、また重大な秘密を持った、尊い品物のように思われて、
(いやいや人などには見せない方がよかろう)
と今日まで誰にも見せることなく、秘密を保って来たのであった。
また嬰児の泣き声と、子守唄の声とが聞こえて来た。
(思い切って行って見ようか?)
珍しく頼春はそう思った。
こうまでも悲哀の心持ちを、こうまでも深刻に起こさせるところの、泣き声の主と唄声の主とが、何者であるかということについて、彼はこれまでは一度として、確かめてみようとはしなかった。
その真相を知ることによって、恐ろしい苦痛を覚えそうだと、こう思われたからであった。
それに彼はこの住居が、漢権守の居城だと、食膳の世話や寝起きの世話をする、若い女から聞かされた時以来、一足もこの部屋から出なかった。
捕えられたら遁がれられない。恐ろしい漢権守の住居の、身の毛の立つような噂話を、久しい以前から聞いていたからであった。