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あさひのよろい
あさひの鎧
国枝 史郎
「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页
「漢権守様のお城でございます」
と、その娘は言葉すくなに答えた。
「いつまでご厄介になれましょうか?」
「永久にでございます」
「永久に? ……でも、わたしとしましては……尋ねる人がありますので、早晩おいとまいたしませねば……」
「はいったが最後出られません」
「まあ」
と、早瀬は笑い出してしまった。
信じられないからであった。
城内はどこを歩いてもよいが、城外へは決して出てはいけない。誰と何を話してもよいと、そう娘は教えてくれた。
「下の町へも参れませんの?」
と、審しそうに早瀬が訊くと、
「いずれはあそこであなた様も、お住居になることでございましょうが、まだ時が参りませぬゆえ」
と、その娘は気の毒そうに答えた。
早瀬は、これまでの習慣から、人と話すことを好まなかった。
そうして、昼間は部屋から出ないで、夜になるのを待ちかまえて、一人でこっそり歩き廻ったりした。
お城にもお長屋にも沢山の人が、生活しているように思われた。
(それだのにどうして陰気なんだろう?)
これが早瀬には気にかかった。
妖怪画のような縦隊は、別櫓の方へ進んでいた。
五重の層を持った別櫓の、頂上の部屋に鬼火の姥が、水盤の水を見詰めながら、傍らの範覚へ云っていた。