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あさひのよろい

あさひの鎧

国枝 史郎

「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页

青空文庫

「そんな筈ではなかったがな」

「正成討ち死ににござります……一族郎党もことごとく戦死で。……城は陥落にござります」

そのくせ正成は笑っているのであった。

(ははあ)

と宮家は感づかれた。

(これはまたわしをカツグ気だな。河内産まれのこの爺は、これでなかなか剽軽者で冗談を仕掛けるから油断が出来ぬ)

「さようか」

と宮家は仰せられた。

「お前に討ち死にされてしまっては、わしも生きている甲斐がないから、お前と一緒に討ち死にときめよう」

「宮様も討ち死ににござります」

「ほほう、それも決定っているのか」

「きまっておりますでござります」

「討ち死にをしてそれからどうする?」

「私は近くの金剛山へ分け入り、しばらく世の中のなりゆきを眺め……」

「変だのう」

と宮家は云われた。

「それでは死んではいないではないか」

「で、宮様におかれましても、しばらく草莽の間に伏され……」

「ああわしも生きているのかな」

「いえ、皆討ち死ににござります」

「…………」

「そこで敵は安心いたし、兵をひとまず諸国へ帰す……」

「ははあなるほど、そういう次第か。……おおかたそうだろうとは思ったが……つまり敵方をして我々一同が戦死したものと思わせるのだな」