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あさひのよろい

あさひの鎧

国枝 史郎

「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页

青空文庫

「はいさようにござります」

「お前一流の兵法だな。……ではわしも戦死ときめて、戦死した後では熊野へでも行こうよ」

朝日が葛城の山脈の上へ昇り、霧が次第に晴れて来た。

烏の大群が空にあって、堀や野面に散在している、昨日の戦いで戦死した敵の、胄や鎧を剥ぎ取られた死骸を、啄もうとして気味悪く啼き立て、舞い下がり舞い上がるのが見てとられた。

宮家は正成と連れ立って、櫓を下へ足を運ばせた。

正季や義光たちも従った。

持ち場持ち場を固めている、将も卒もこの一団を見ると、恭しく頭を下げた。

二の木戸あたりまで辿って来た時、十数人の兵どもが、円くかたまって騒いでい、その中から悲しそうな泣き声が聞こえた。

「正成、何んだな?」

と宮家は訊かれた。

「泣き男にございます」

正成は微笑してそうお答えし、その方へ向かって足を進めたので、宮家もその群れへ寄って行かれた。

哀れっぽい顔をした年輩の男が、涙を流し鼻に皺を寄せ、

「悲しや悲しや我らのご主人様の、多門兵衛正成公は、戦い利あらずと観念あそばされ、昨日深夜にお腹を召され、この世を去りましてござります。……首級などあらば葬ろうものと、わが身探しているのでござるが、死骸へは火をかけ焼きましたとか、後に残ったは灰ばかり、あら悲しや何んとしようぞ」