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あさひのよろい

あさひの鎧

国枝 史郎

「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页

青空文庫

そこでこの土地にいる間は、近在近郷へ出かけて行って、鬱憤ばらしの乱暴をやったり今度のように他国へ走って、羽根をのして一月でも二月でも、遊びほうけて帰らなかったりするのさ。……が、俺としての本心は、功名手柄勝手次第、下剋上のこの時代に、せめて大国の一つ二つ持った、大名になりとなりたいというのさ。……ところで今度京へ行ってみて、耳よりの噂を耳にしたので、こいつをうまく塩梅したら、六波羅殿より莫大もない、恩賞を得られるに相違ないと、それで急いで帰って来たのさ。……ところがせっかく帰ってみると、お父上が気違いじゃと。……これじゃアどうにもクサるなあ」

「いいえそのお父様のご病気も、この頃ご本復なさいまして……」

「ナニ本復? 治ったのか! ……馬鹿め、早くそういえばよいに!」

「それも尊い山伏殿のご祈祷のおかげでございます」

「ナニ山伏の? 山伏のご祈祷?」

「九人の山伏殿が参られまして……」

「九人の山伏? フーム、九人の……」

「そのうちのお若い先達様が……」

「その山伏、その後どうした?」

「家にご逗留でございます」

「この家に泊まっているというのか」

「はい、それでわたくしどもは、毎日毎日心をこめて、ご接待いたしておりまする」