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あさひのよろい

あさひの鎧

国枝 史郎

「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页

青空文庫

「あッ、あッ、……誰か!」

が、呉服は咽喉をしめられ、グッタリとなって廊下に倒れた。

向こうから来かかる人影があった。

(一大事)

と大弥太は呟き、雪の庭へ飛びおりた。

来かかったのは蓬生であった※(感嘆符二つ、1-8-75)

「まあ」

と云って足を止め、

「呉服様ア――ッ」

と仰天して叫んだ。

「気絶して……呉服様が……気絶して!」

雪明りの街道を、大弥太は一散に走っていた。

――京都で耳にした噂というのは、大塔宮様が赤坂を脱し、山伏姿に身をやつされ、八人のお供を従えて、熊野の方へ落ち行かれたが、十津川を経て吉野か高野へ、いずれはご潜行なさるるであろう。居場所を突き止め密告した者には、一国一城を褒美として与える。――という、そういうことであった。

(熊野、十津川、吉野といえばいわば俺の縄張り領分、その辺に事実お忍びなら、探すに手間も暇もいらぬ。居場所つき止め密告し、その恩賞にあずかろう)

こう思って帰宅したのであった。

帰宅して見れば何んという僥倖、宮家はわが家におられるではないか!

そこで顔見知りの熊野の別当、定遍僧都に告げようものと、今走っているのであった。