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あさひのよろい
あさひの鎧
国枝 史郎
「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页
その結果は不幸にも、宮方のいたいたしい敗戦となり、本院には隠岐の島へ、新院には佐渡の島へ、中院には土佐の国へ、この日本に武将あって以来、もっとも腹黒き逆臣の代表、冷酷苛察の人畜ともいうべき、北条義時の手によって、それぞれ御配流のお身の上になられた。
この一事を卒然と宮家には、今お思い出し遊ばされたのであった。
隆貞も黙っていた。
で、部屋内はひっそりとなって、哀愁の気ばかりが漂って感じられた。
が、にわかに宮家の御顔へ、快然とした微笑が産まれ出た。
「隆貞ご覧」
と、仰せられ、背後の方へ御指をさされた。
見れば背後の床ノ間に、日月を金銀で打ちつけたところの、錦の御旗が一流れ尊厳そのもののごとく森然と、霊気を含んで立ててあるではないか。
「…………」
隆貞はただに頭を下げた。
「ね」
と、宮家は仰せられた。
「御旗が我らをお守りくださる。……いや我らが御旗を捧げて、まつろわぬ者どもを折伏するのだ」
「靡かぬものとてはござりますまい」
「日本ばかりか異国さえも靡くよ」
吉野へ!
幾日か日が経った。
宮家は令旨を竹原入道に与え、伊勢の国へ兵を出し、平定すべくお命じになった。