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あさひのよろい
あさひの鎧
国枝 史郎
「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页
「そうともよ」
と、左源太は云った。
「恩を仇じゃ! 恩を仇じゃ!」
「どうでも討たずばなるまいがな」
「討つともよ、どうでも討つ!」
「車の庄も手に入るしな」
「六千貫も手に入るわ!」
草には露が下りていて、足に冷たく感じられた。
「玉置の荘司殿は何んと云われたかな?」
大弥太はふと気づかわしそうに訊いた。
「よもや宮家へご加担などとは……」
「云わぬよ」
と、左源太は物憂そうに答えた。
「宮家を討つは以前よりの存念、昔よりわしは武家方じゃとな」
「そうであろうとも、そうなくてはならぬ。……では明日宮家が小原をさして行かれ、玉置をお通りになろうものなら、荘司殿には弓矢をもって……」
「弓矢をもってお敵対するとも」
「が、それには及ばぬのう」
「…………」
「われらが今夜やるのじゃからな」
「…………」
「われらがやらずば玉置殿がやる。……どっちみち宮家はご運の尽きよ」
「…………」
「玉置殿に功名されては、車の庄と六千貫とが、われらからフイになってしまう。……そちにしては弟の敵が討てぬ」
「だがのう」
と、左源太は気弱そうに云った。
「恐ろしいことも恐ろしいぞ」
「また弱気か、臆病な奴め!」