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あさひのよろい

あさひの鎧

国枝 史郎

「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页

青空文庫

樵夫小屋を遥かのあなたに見て、林の中に桂子たちは、焚火をたきながら団欒していた。

それとなく大塔宮様ご一行の、ご警護をしているのであった。

焚火に照らされて松の木の幹は、巨大な蟒の胴のような姿を、薄銅色に光らせていた。

「……という訳でございまして、村上彦四郎殿のお働きは、見事のものでございました」

錦旗を取り返したあの事件を、また物見に行って見かけたところの、風見の袈裟太郎はそう語り終え、腰かけていた松の根から下りて、焚火の方へ寄って行った。

「今日はお遁がれ遊ばされたが、明日の大難はどうだろうかねえ」

と、焚火から少し遠く離れ、浮藻の方へも顔を向けず、桂子の方へも眼を向けず、所在なさに焚火を見詰めている、土岐小次郎の端麗な顔を、飽かず眺めながら桂子は云った。

「芋ヶ瀬の荘司は実のところ、まだ人情味があるのだよ。……それが玉置の荘司となると、非人情で強慾で惨忍だからね」

「しかし野長瀬六郎兄弟が、兵を率いて宮様お迎いに、途中まで出張ることと存じまするが」

と、焚火へ薪をさしくべながら、袈裟太郎はそう云った。

薪は、ひとしきりくすぶって、もくもくと煙りを夜空に立てた。