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あさひのよろい
あさひの鎧
国枝 史郎
「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页
(いったいどうしたらよいだろう?)
こうして今日になったのである。
その今夜、はじめて浮藻の口から、思い迫った決死の語調で、
「どこの山の奥へなりと、どこの海の果てへなりと、二人で行ってくらしましょう」
と、涙と共に口説かれたのであった。
燈心を引いてわざと細めた紙燭の光が、古びた襖へ、朦朧とした二つの影法師を、妖怪のようにうつしている。
庭へ散り落ちる木の葉の生命を、傷むかのように聞こえて来るのは、秋深い虫の声々であった。
「浮藻殿、参りましょう」
ややあって小次郎は決心したように云った。
「いつぞや河内の林の中で、桂子様からわたしたち二人は、どこへなりと行ってくらすがよいと追いやられた身の上でござります。……漢権守の居城の事件から、このような境遇とはなりましたが……今こそ出かけて行くべき時……」
「おおそれでは小次郎様、わたしと一緒にここを出て他国へ!」
と浮藻は小次郎へ縋りついた。
「それでこそ妾は救われまする! ……どのような苦労がありましょうとも、このようなありさまでこのような所に、苦しみながら住んでいるより……」
「忘恩の徒と桂子様には、わたくしたちの立ち去った後、お怒りになるかは知れませぬが、それもこれも一時でござって、わたくしどもの姿が消えましたならば、かえって桂子様に致しましても、心朗らかになりましょ