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あさひのよろい
あさひの鎧
国枝 史郎
「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页
「浮藻様は行衛不明、右衛門殿も行衛不明……ご家来衆は寄りつかず…」
この時館の玄関から、影法師のようなものが現われて、二人の女の方へ近寄って来た。
旅装した風見の袈裟太郎であった。
「袈裟太郎様お出かけか」
「この早い足で日本国中を巡り、桂子様や浮藻様の行衛を、わしはお探しするつもりさ」
「さようなら袈裟太郎様」
「さようならお前たち」
袈裟太郎が悄然と立ち去った後、二人の女も館から去った。
雨が蕭々と降って来た。
廃園の中に廃屋が、悪霊殿を持ちながら、滅亡の相をなして立っている。
吉野の城戦
明くれば元弘三年であった。
その二月の下旬において、二階堂出羽入道道蘊は、六万余騎の勢を率い、大塔宮の籠らせたまえる吉野の城へ押し寄せた。
要害堅固の城だったので、容易に落ちそうにも見えなかった。
しかし以前から武家方であり、そのため大塔宮のご意見によって、権勢を剥がれた吉野の執行、岩菊丸が逆怨みをし、寄せ手の勢に内通し、裏山づたいに寄せ手の勢の一部を、城の搦め手へ案内し、火を放って攻撃したので、宮方は守りを失ってしまった。
それは閏二月の一日であったが、この日宮家には蔵王堂の御座に、赤地の錦の鎧直垂に、巳の剋ばかりの緋縅の鎧――あさひの御鎧をお召しになり、竜頭の御兜をいただかれ、三尺五寸の小薙刀を持たれ、二十余人の家臣と共に