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あさひのよろい
あさひの鎧
国枝 史郎
「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页
が、またも頼春の耳へ、追い縋るように同じ声が聞こえた。
「ご謀反ことごとく失敗に終り、お味方をした武士衆は、あるいは討ち死にあるいは斬り死に、公卿衆は遠島となりましょう。……難をまぬかるる手段は一つ、返り忠ばかりにござりますぞ!」
それは怯やかすような声であった。
もう頼春は動けなくなった。
往来の真ん中へ足を止どめ、胴顫いする心持ちで、もう一度あたりを見廻してみた。
と、十数間離れたあなたに――もと来た方の家の軒に、その軒よりも高いほどに、身長高い一本の御幣のようなものが、風に靡いて立っていた。
巫女姿の老婆であった。
「あいつだ!」
と頼春は呻くように云った。
そうしてあたかもその御幣に、人を引きつける魔力があって、その力に引かれたかのように、頼春はそっちへ走って行った。
「誰だ!」
と老婆と顔を合わせた時、頼春は焦噪した怒声で叫んだ。
「そちであろう! そちであろう! 俺に言葉をかけたのは※(感嘆符疑問符、1-8-78)」
「頼春殿」
と老婆は云った。
「あなた様にお言葉をかけましたは、いかにも妾にござりまする。……返り忠おすすめしましたも、この姥にござりまする」