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あさひのよろい
あさひの鎧
国枝 史郎
「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页
顔に白布をかけている。
不具車の中にいるものは、両手と両足とを切断られ、首と胴ばかりになった男であった。
土岐蔵人頼春であった。
その顔もその胴も、骨と皮ばかりに痩せていた。
盲目の眼を前方に向け、歯のない口をポッカリと開け、破損れた笙のような嗄れた声で、
「大塔宮様ご幽居あそばさるる窟までご案内くださりませ」
と云った。
理智光院も南の方も足を止め、妖怪さながらの不具の乞食を、驚きの眼をもって凝視した。
「神の界に属しまつる御一方――大塔宮様にお眼にかゝり、許すとの御言葉承まわりたさに、御後を慕うて諸国をさまよい、この地にご幽閉と承まわり参りましたものにござりまする」
そう頼春は云いつづけた。
「誰じゃ?」
ようやく理智光院は云った。
「姓名は? 身分は?」
「昔は由緒ありましたもの、今は非人にござりまする。……裏切り者にござりまする」
「裏切り者? 裏切り者というか?」
「※悔の罪人でござりまする! 浄罪の巡礼にござりまする」
「…………」
「殺人の鬼にござりまする」
「…………」
「裏切りをし、※悔をし、浄罪の旅に出でながら、人を殺し、自身も斬られ、後悔し、※悔をし、しかもその後も人を殺し、月日を経ましたものにござりまする」