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あさひのよろい
あさひの鎧
国枝 史郎
「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页
……が、要するに色っぽい、色っぽい因縁というやつさ」
酒に酔っている範覚でもあった。
得意絶頂の彼でもあった。
頼春をして裏切りさせた、その功の一半は鬼火の姥が、頼春の心をそそのかし、それに押しやったということを、鬼火の姥の言上によって、北条範貞は知ることが出来、事実姥に褒美をとらせ、姥の同類一統にも、厚く物を賄った上、なお今後ご用をつとめるようにとの、ご諚をさえ内密に賜わったのであった。
姥の一党で姥の情夫の、この金地院範覚など、もっとも多額に賄われた方で、得意はまさに絶頂なのであった。
行衣の下へ腹巻を着、籠手さえつけた範覚は、一方の物頭にでもなった気で、厳めしく物々しく振る舞うのであった。
が、素性は争われず、それにそうでない平素の時でも、度外れたお喋舌りの彼だったので、まくし立てることまくし立てること!
そういう彼をとりまいて、黒木をいただいた白河女や、壺装束の若い女や、牛を曳いた近郊の農夫や、高足駄をはいた北嶺の僧や、御幣を手に持った清水の巫女や、水干に稚子輪の僧院の稚子や、木匠や魚売りや玉工や鏡師が、あるいは笑いあるいは怒り、あるいは軽蔑の表情をし、時々揶揄の声をかけたり、叱るような声を発したりして、でも去りもせず聞いていた。