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あさひのよろい
あさひの鎧
国枝 史郎
「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页
今日はよく晴れた秋日和で、時刻も真昼であたりは明るく、空では鳶が銀笛をころがし、浮かんでいる雲にたわむれてい、陽のあたっている地面では、犬が幾匹となく狂っていた。
が、遙かの京の町の、西七条あたりで火事でも出したか、黒煙が高く上がっているのが、何んとなくたたずまいを殺気立たせて見せた。
「……ところでその女の顔形だが……ええと、こうと……いけねえ忘れた! ……はてな、俺、酔ってるかな?」
したたか酔っている彼であった。それに秋陽にカンカン照らされ、さらにベラベラ喋舌ったため、その酔いが加速度に進行し、ひどいものになっている彼でもあった。
「酔っちゃいない!」と彼は怒鳴った。
「せいぜいのところ生酔いだ! ……こうと、生酔いというやつは……酔っていないということであって……酔っていないというからには、正気であるということであって……正気であるということは……生酔いであるということであって、……生酔いであるということは……まてよ、こいつ、どうも変だ! ……いろいろのものがグルグル廻り、遠くに見えている比叡山めが、四つにも五つにも見えるように……俺の云うことどこまで行っても、一向埓があかないが……こうと生酔いというやつは……妾の顔形ということであり……その顔形は美人でなくてはならず……美人だとすると生酔いで……どうも