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オリンポスのかじつ
オリンポスの果実
田中 英光
「文学界」1940(昭和15)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 75,277 字 · 147 页
や、シャブルボオドをして遊んでいれば、暑さなど、想ってもみない、楽しさで充実した時間でした。
飯を食うと、ぼくは直ぐAデッキに出て、コオチャア黒井さんが昼寝している横の、デッキ・チェアに腰を降し、瀝青のように、たぎった海を見ています。暫く経ってから、黄色いブラウスに白いスカアトをはいた、あなたと、赤いベレエ帽に、紺の上衣を着た内田さんとが、笑いながらやって来ます。内田さんは、ぼくに、「ぼんち、デッキ・ゴルフやろう」と言ってから、今度は黒井さんの手をひっぱって、無理に起します。黒井さんは、「ああァ」と大欠伸をしてから、周囲をみまわし、「大坂とか、よし、また、ひねってやろう」とゆっくり立ち上がるのでした。
そこで、あなたと内田さんの組と、ぼくと黒井さんの組が対抗してゲエムを始めます。ぼくにとって、勝負なぞ、初めは、どうでも好いのですが、やはり良い当りをみせて、あなたの持ち輪を圏外の溝のなかに、叩き落したときなぞ、思わず快心の笑みがうかぶ、得意さでした。
ことに、ぼくをいつも庇護してくれる黒井さんが、そういうとき、「うまい」と一言、褒めてくれるのが、ふだんクルウの先輩達が、ぼくをまるで、運動神経の零なように、コオチャアに言いつけているのを知っているだけ、とても嬉しかったのです。