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ちきゅうはっきょうじけん

地球発狂事件

海野 十三

「協力新聞」1945(昭和20)年9月1日~1946(昭和21)年(終号未詳)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 86,306 字 · 173 页

青空文庫

「おう、あれか」と水戸の声は慄えた。

「なるほど不思議だ。雪のあるヘルナーの峰が盛んにもえている……」

そういった水戸の言葉を、今度は逆にドレゴが愕く番となった。

「なに、ヘルナーの峰が燃えているって。そんなはずはない」

「そんなはずはないといっても、確かに燃えているよ。炎々たる火焔が空を焦がしている」

「え、それは本当か」

ドレゴはさっと顔色をかえて、車を停めた。そして扉をあけて下へ立った。

おお、なるほどヘルナー山頂は火焔と煙に包まれていた。例の汽船の姿はその煙の中に殆んど没入していた。さっきまでは煙一筋もあがっていなかったのに、これはどうしたことであろうか。

友はしきりに感歎の声を漏らしていた。そして滅多に興奮しない彼が日頃にもなく顔を赤く染めて、激しい感投詞を口にした。

「これが僕の知っていることすべてだよ。後は、すっかり君の知識と同一さ」

ドレゴは言葉の終りをそう結んだ。

しかし正確にいうと、彼のこの言葉は完全だとはいい切れなかった。なぜならば彼はもう一つ水戸に語るべき事柄を忘れたのであった。尤もそのときドレゴ自身が、その事柄をすっかり忘却していたのだから、彼を責める訳にも行かないだろう。