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ちきゅうはっきょうじけん
地球発狂事件
海野 十三
「協力新聞」1945(昭和20)年9月1日~1946(昭和21)年(終号未詳)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 86,306 字 · 173 页
と命名するより外に他に妥当なる名前のつけ方がないことが、誰にも首肯されるに至った。さてこそまことに天下一大事、この事件にまさる大事件は有史五千年このかた記録にも予想にもなかったといえる。前置きはこのくらいに停め、それは一体どんな事件であったかという記述にうつらねばならぬ。それにはこの事件の発見者である記者ドレゴ君を登場せしめることが最も効果的であろう。
ドレゴ記者はオルタ町の郊外に、先祖伝来の家を持っていた。もちろん土地の旧家であって、農業や牧畜や交通について、彼の祖先は代々大きな権力をもっていたのである。ところが彼の父の代になって――というよりも数年前、このアイスランドがデンマーク領たることを御免蒙り独立してしまってからは、イギリス軍やアメリカ軍の進駐となり、古い淋しいアイスランドは急に夜が明けたように賑やかになった。そして彼の家も昔に増して大へんに忙がしくなったが、その権力の方は自然に消えていったのも仕方のないことであった。
ハリ・ドレゴはこの家の長男で、今年二十四歳になる。前にもいったようにデンマーク新報の記者であるが、このような土地のことゆえ特権もなく、牡牛のように張り切っている彼にはむしろ気の毒の連続であった。