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だいうちゅうえんせいたい

大宇宙遠征隊

海野 十三

「国民五年生」1941(昭和16)年4月号~(終号未詳)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 53,967 字 · 109 页

青空文庫

月の引力

噴行艇のそとには、空気がすこしもないのである。だから窓をあけると、空気はどっと外へにげて、ひろがってしまったのである。音がきこえなくなったのは、このわけであるか。三郎はそのわけがやっとのみこめた。

「艇夫。そこの窓から、下をのぞいてみるがいい。これから着陸しようとする月の陸地が見えているよ。しかし、おどろかないがいいぞ」

と、丸い窓を指さして、艇長はいった。

月の引力

(おどろいては、いけない)

艇長は、そういったが、三郎はそんなにいちいちおどろいていてはしようがないと思った。なに、おどろくものか、と度胸をすえて、窓から下を見おろした。

「あっ!」

だが、やっぱり三郎はおどろきのこえをあげた。なんという怪奇な月世界の風景であろう。

飛んでいく噴行艇の下は、まっくらであったが、それからずっと向こうの方を見ると、これはまたまぶしいまでに光る銀色の大きな陸地があった。

よく見ると、その光る陸地は、けわしい山々が肩をならべて、そびえている。山の端が光って、その後は墨でぬりつぶしたように、まっ黒な山脈が手前の方にあった。それより向こうの山脈は、全体がまぶしく光っていた。