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やまびこおとめ

山彦乙女

山本 周五郎

「夕刊朝日新聞」1951(昭和26)年6月18日~9月30日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 126,360 字 · 251 页

青空文庫

三

その微粒の塵に咽せて、彼がつよく咳くと、それが岩壁にこだまして、遠くまで、ながく尾をひきながら、響いていった。

高さは八尺、横は五尺くらいだろう、ほぼ同じ大きさの空洞が、左右へずっと延びている。どちらが入口か、はたして(いま落ちた穴のほかに)出入りをする口があるかどうか、もちろんわからない。

「だいたいの見当では」彼はそっと呟いた、「そう、かんば沢から、そう離れたところではない筈だ、少し、脇にそれているか、上のほうに当るくらいだろう」

岩屑の塵が、しずまってきた。やがて半之助は、崩れた岩の、破片の山から、左のほうへおりた。気圧が違うのか、それともあまりに静かなためか、両方の耳が、圧迫されるように、があんと鳴るのを覚えた。

二三歩あるきだした彼は、にわかに、左右が明るくなったのに気づいて、不審に思いながら、立ち停った。蝋燭を上げてみると、岩壁の天床と、左右とが、眩しいほど、光りを反射するのであった。

――それだけのことか。

出口でもあるのかと思ったので、ややがっかりし、さらに十歩ばかりゆくと、足もとに、人が倒れているのをみつけた。吃驚して、あっと、危うく叫びかけ、逃げだそうとした。