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さこんのいかり
左近の怒り
「講談倶楽部 第六巻第九号~第一一号」1954(昭和29)年7月1日~9月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 47,454 字 · 95 页
「誰の命令?」
「誰のだか分らないよ。だが、その命令をボクに中継するのはボクのキャバレーのマスターだ。つまりボクはこの事件にかかりあったためにこの脅迫や命令に従わざるを得ないことだけハッキリしてるんだ。それがボクらの世界の掟だね。キミが穏便に立ち去ってくれればボクも助かるし、結局この店や妹のためにもなるのさ。ここに旅費があるから。この通り、たのむ」
洋次郎は金一封の封筒を机の上へおいて、両手をついて頭をさげた。十日ほど前には、洋次郎の今いる場所で大竜が手を合せて拝んだのを思いだして、左近は変な気がしたが、洋次郎が全然うちしおれているから、なんとなく気の毒な気持にもなった。
「タノミをきいてあげたいが、ここの社長にも同じようにたのまれたのでね。引受けた以上はボクの一存ではどうにもならないね」
「キミが東京から立ち去るのが社長のためにもなるのだよ。それを理解してくれたまえ」
「ボクが理解する必要はない。社長が理解してくれさえすればね」
「社長が了解すれば海へ戻るね」
「むろん、戻る。しかし、キミが社長を脅迫しての了解なら、海へ戻ることはできなかろうよ」
「ひどい侮辱だなア。