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さこんのいかり

左近の怒り

坂口 安吾

「講談倶楽部 第六巻第九号~第一一号」1954(昭和29)年7月1日~9月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 47,454 字 · 95 页

青空文庫

「しかし、たしかに知ってるね。そして玉子以外の人々も知っている。なぜなら、今朝ボクのところへ現れた女もキミを知ってるはずだからだ。してみれば、キミがこの出版にかかりあってる人物と承知の上の企みだね」

「そういうことになるようですね」

「キミはまた何だって金庫爆破にノコノコでかけたのだい?」

「爆破するかしないかは誰の金庫か見とどけた上できめるつもりでした。あるいは金庫の代りに千葉ウジをなぐり倒して戻ることも考えていました。もっとも、ピストルかなんか突きつけられて否応なしに爆破させられたかも知れませんがね。その時まかせのつもりでした」

「ボクも今朝までは別のふうに考えていたのさ。つまり住田がなかなか再校をださないのは、取引きしてるからだと思っていたのだ。それを高く売りつけて出版を中止するとね。もっともボクの方へちゃんと勘定を払ってくれればボクもそれ以上固執することはないわけだがね。しかし、今朝方の女のことや、キミの話をきいてみると、住田以外の誰かが、住田ぬきでこの出版を挫折させようと暗躍しているようなフシがあるね。すくなくともその人物が住田でないことは確実だ」