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さこんのいかり
左近の怒り
「講談倶楽部 第六巻第九号~第一一号」1954(昭和29)年7月1日~9月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 47,454 字 · 95 页
「ちょいとドライブということもある」
「バカ」
「吉野大竜は静かに考える。たぶん夕食をたべて戻ってくるかも知れんぞ。あの娘をさらっても一文の得にもならんではないか」
「ボクを脅迫することができるし、その脅迫に絶対服従させることができる。バカ大竜の首をチョン切ってこいと云われればそのトンマ首をチョン切ることは絶対だ。よく覚えておけ」
「してみると、そこにおいて、だ。キミがワガハイを脅迫するために玉子を使って葉子をかどわかしたという推定もできるぞ。ウム。それもある」
とたんに大竜の小柄の身体が椅子をころがして壁の下へすッとんだ。洋次郎は大柄であるし、腕ッ節も強いから、怒りにまかせたその一撃をうけた大竜、ウームと時折うなるだけ。起き上る力もない。目を白黒して、ぶたれたところをさすっている。
タコスケと左近はふきだした。同情の余地がない。味方の二人が笑いたてるばかりで手をかしてくれないから、大竜しぶしぶ起きあがった。
「吉野大竜は殴られて昏倒しつつも考える。実業家とはこういうものだ。今朝氏家印刷へジャンパーの若者をさがして行った女がいる。玉子の家人だ。してみれば彼女らはジャンパーの若者と玉子が腕を組んで消え去った行先、即ち白雲荘を知らないのだ。