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さこんのいかり

左近の怒り

坂口 安吾

「講談倶楽部 第六巻第九号~第一一号」1954(昭和29)年7月1日~9月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 47,454 字 · 95 页

青空文庫

「意地わるねえ。からかったりして。いますぐに、つきあって下さるつもりでしょう」

それ以上じらすのもあくどいので葉子は立った。わざとタコスケへ伝言なぞは残さないことにして、またそれが玉子にも分るように、物陰では何もしないように注意した。体格検査のように一々玉子の目の前で身支度をしてみせたのである。

「タコスケが戻ってきてあわてるわ。私の姿が見当らないし、書き残したものもないから」

玉子に笑みかけてみせた。玉子もそれに笑みかえして、

「無人の際に泥棒が盗んでいくと、アナタが疑られるわね」

「それだけは大丈夫よ。信用が特別なんですもの」

自動車は走りはじめた。白雲荘とは方角がちがう。そして白雲荘よりももっと郊外へグングン走る。

「私はアナタの味方ですと以前あれほど云ったのに信用して下さらないようね」

「そうよ」

「どうして?」

「私の疑問に答えて下さる?」

「答えてよろしい範囲でね」

「夏川さんを白雲荘へつれこんで姿を消したのは?」

「どのみち夏川さんは狙われてたんですもの、私がその中間にたつ方が安全の保障になったから。さもなければ、もっと危険よ」

「金庫を爆破に行くことよりも?」