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さこんのいかり

左近の怒り

坂口 安吾

「講談倶楽部 第六巻第九号~第一一号」1954(昭和29)年7月1日~9月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 47,454 字 · 95 页

青空文庫

犬には親しみをいだいている葉子であったが、この犬どもには身の毛のよだつ思いがした。

玄関からジュウタンをしいた階段を上って二階の広間へ。そこは洋室になっている。電気ストーブを入れた大きなマントルピース。豪華なイス。

しかし、その広間にも止まらずに、長い廊下を曲ってその突き当りの二階の離れへ。洋風の寝室にバスと小部屋が附属している。その小部屋から五十がらみの目の鋭い女が現れて二人を迎えた。

「ここがアナタの寝室よ。その小部屋にはこのオバサンがいますから、用があったらいいつけなさい。進駐軍に接収されてたから、こんなグアイにムリヤリ洋室に改造して座敷の一ツを浴室にしちゃったんですって」

「私の寝室ッて、どういう意味?」

「泊っていただくことになるかも知れないから。安心してらッしゃい。私はアナタの味方よ。もう私の名は御存知ね」

「玉子さんでしょう」

「ワケがあってのことですから、辛抱してちょうだい。決して悪いようにはしませんから。ですが、この部屋から出ないようにね」

「どうして?」

「それをきかないで辛抱して下さることよ。私がアナタの味方だということを信じて」

「信じていないわ」