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ふくいんさつじんじけん

復員殺人事件

坂口 安吾

「座談 第三巻第六号~第七号、第四巻第一号~第三号」1949(昭和24)年8月1日~9月1日、1950(昭和25)年1月1日~3月1日(未完)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,621 字 · 195 页

青空文庫

熱海銀座というところの十字路に傷痍軍人が立ってますから、写真を見せてごらんなさいよ。傷痍軍人が休業だったら、そのへんの商店の人に見せてごらんなさいな。知らないという人間はいませんぜ」

「ホウ」

大矢捜査主任は身構えを正して重吉を見つめた。

「お前は熱海銀座で安彦氏を見たことがあるのだね」

「左様」

「いつ?」

「この春でしたよ。四月か五月頃かね。チラリと一度見ただけだが、あの姿は忘れませんや。たぶん、同じ人間です」

「お前は安彦氏が帰宅した時、それに気付いていたのか」

「まアね。そこで、まア、オセッカイの話ですが、身の丈をしらべてみたんでさア。妙な天一坊さ。この謎は龍教よりも深刻ですぜ。さ、熱海へ走ったり、走ったり。私の知っているのは、これで全部だから、あとは旦那におまかせしますよ」

大矢警部はうなずいて

「イヤ、ありがとう。そのほかに、お前の知っていることを、みんな話してくれないか」

「ゴアイニクサマ。これだけで全部でさア。私は探偵と違いまさア。この石頭で何ができるものかね。ただ偶然熱海の町で白衣の安彦さんを見かけたことがあったというだけのことさね。じゃア、オイトマしますよ」