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ふくいんさつじんじけん
復員殺人事件
「座談 第三巻第六号~第七号、第四巻第一号~第三号」1949(昭和24)年8月1日~9月1日、1950(昭和25)年1月1日~3月1日(未完)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,621 字 · 195 页
あるいはワザとそうするのかも知れない。敵に甘く見られたい計略かも知れないのである。それを承知していながらも、これをやるので、私も本当に彼を甘く見てしまう。時には、私まで赤面したくなってしまう。
巨勢博士があんまりトンマなことを言ったせいか、これを機に、大矢主任は懇談会を中止することにした。
「いろいろと話をうかがわせていただいて、ありがとうございました。最後に、ちょッと妙なお願いですが、皆さんに、左の手で、小田原、小峰、倉田由之、と書いていただきたいのですが」
大矢主任は手帳をさいて四人に配布し、用意の鉛筆を配った。
左手で書くのは、むつかしいものだ。みんな苦労している。
重吉にも来てもらって、書かせた。
ところが重吉はスラスラと書いた。
「オヤ。君はギッチョかね」
大矢主任は呆れてきいた。
「左様。左りマキの証拠かね」
「じゃア、右で書いてくれよ」
「アッハッハ」
重吉は、又、スラスラと書いた。
「驚いたね。君は、左右両刀使いかね」
「オヤ、オヤア。捜査主任ともあろうお方が変なことを仰有るぞウ」
重吉はイタズラッぽい目を光らせて笑いながら大矢主任を見つめた。