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ふくいんさつじんじけん

復員殺人事件

坂口 安吾

「座談 第三巻第六号~第七号、第四巻第一号~第三号」1949(昭和24)年8月1日~9月1日、1950(昭和25)年1月1日~3月1日(未完)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,621 字 · 195 页

青空文庫

ピストルは何式のものですか」

「ワシは知らん。もらってやった、というだけで、気にとめたこともないから、覚えておらん。きいてみもしなかったよ」

「大きさは覚えていらっしゃいませんか」

と、巨勢博士が、きいた。

刑事とも見えない小柄の若僧が、やにわに横から口をだしたから、由之はビックリして、しばらく睨みつけている。そして、ウンザりしたらしい。

「大きさ? そうさ。ポケット手帳に毛の生えたようなものだ。長さは五六寸、西洋人ならポケットの中で握って射つことができるそうだが、日本人のポケットでは、そうは行かぬかも知れん。ワシは、やってみたことがないから知らん」

「お嬢さんも、そのピストルを見た覚えがおありでしたね」

「ええ。どこで見たか覚えがありませんけど、定夫兄さんも、たしか、知ってらッしゃるでしょう」

「ウン。オレも見たことがある。雀を射ってやろうと思って持ちだして、公一兄に、どやされたことがあるよ。中学二三年生のころの話だろう」

「弾がこめてありましたか」

「あたりまえさ。弾がこめてなきゃ雀が射てるかい」

「イヤ、どうも」

と、巨勢博士は赤面した。彼は時々、とんでもないトンマなことをきく癖があった。