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ふくいんさつじんじけん

復員殺人事件

坂口 安吾

「座談 第三巻第六号~第七号、第四巻第一号~第三号」1949(昭和24)年8月1日~9月1日、1950(昭和25)年1月1日~3月1日(未完)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,621 字 · 195 页

青空文庫

一同を見返して、

「今夜の御馳走はフグでしたか」

「ヘエ、そうです。どうも困ったことになりやがったね。こしらえたのは、この私でさア」

と、蛸重が言った。

「しかし、ねえ。フシギだよ。ほかの御方はピンピンしているし、私の料理に毒のある筈はないのだがね。それにさ。一番猛毒のマコはどなたにも差上げませんやね。私が一人で平らげているよ。私の家族にも、これだけは食べさせませんや」

美津子がそれに同意して言葉をはさんだ。

「ほんとよ。定夫兄さんの召し上ったのは、オサシミだけです。チリ鍋には見向きもなさらなかったのです。それは、いつものことです」

「時々フグを召上るのですか」

「それは、この家の習慣だ。日曜、祭日には、たいがいフグを食っとる。ワシは二十年以前から、そうしないと腹の虫がおさまらない習慣だよ」

由之が苦りきって、言った。

「今まで、一度だって、誰も中毒など起しやせん。見たまえ。今夜だって、定夫のほかは、異状がないじゃないか」

「そこが奇妙なところですな」

大矢主任はさすがにムッツリしている。いよいよ出でて、いよいよ奇怪というところかも知れない。

「今夜の夕食を召し上ったのは、どなたですか」