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ふくいんさつじんじけん

復員殺人事件

坂口 安吾

「座談 第三巻第六号~第七号、第四巻第一号~第三号」1949(昭和24)年8月1日~9月1日、1950(昭和25)年1月1日~3月1日(未完)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,621 字 · 195 页

青空文庫

美津子さんは甘くないと仰有って、ずいぶんお入れになりましたが、父も酒のみのくせに甘い物が好きですので、私が入れて差上げたものに、自分で一匙たしたように覚えております」

「そのお砂糖をひとつ見せていたゞきましょう」

由子は私たちを食堂へ案内して、豪華な戸棚の中から銀製の砂糖壺をとりだした。警察医はそれをちょッと舐め、中を眺めていたが、

「なるほど、光るのと、光らないのと、半々ぐらいにまじっていますな。どッちが催眠薬だか見当がつきませんが、光らない催眠薬もあるし、あちらの砂糖と同じようにキラキラした催眠薬もあります」

そう云って、医師はちょッと考えていたが、

「そう、そう。さっきのお嬢さんの部屋のテーブルの上に、何か飲み物があったっけ。殆ど飲みほしてあったがたしか、ココアかコーヒーのようでしたよ」

「あゝ、そうです、ココアです」

と、由子が叫んだ。

「美津子さんは一杯目をのんでから、お部屋へ行く時、もう一杯、持ってらしたのです」

「では、どうも、おねむいところを御苦労様でした。また、明日、おきゝしなければならないことがあるでしょうが、今晩はゆっくり休んで下さい。