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ふくいんさつじんじけん

復員殺人事件

坂口 安吾

「座談 第三巻第六号~第七号、第四巻第一号~第三号」1949(昭和24)年8月1日~9月1日、1950(昭和25)年1月1日~3月1日(未完)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,621 字 · 195 页

青空文庫

なるべく皆さん別々のお部屋へやすんでいたゞきたいのですが」

「えゝ、どのお部屋でゞも」

由子は無表情に、冷めたく答えた。

由子が去ると、捜査主任はモトをよんだ。

「ねむいところを、気の毒だが、ちょッと、きゝたいことがあってね。この食堂の砂糖壺は、食堂でココアやコーヒーをのむ時だけ使うのかね」

「ハイ、そうですよ。お勝手には、お勝手で使うお砂糖が山ほどありますよ。あちらの砂糖も、台湾の赤ザラもネ」

「この砂糖壺がカラになると、お勝手から補充するワケだね」

「えゝ、まあ、そうです。このお屋敷では、お砂糖ぐらい、方々の戸棚にシコタマありますよ」

「ここへ新たに補充したのは、いつだったね」

「さア、四五日前のことでしょうよ。夕食後に紅茶かココアを召上るぐらいのものですから、あんまり減りは致しません」

「お前が安彦さんに食事を差上げたのは何時ごろだったね」

「七時半ころか、八時ころか、そのぐらいの時刻だろうと思います。私なんかに時刻々々と仰有っても、たいがい、まア、でたらめですから、そう思って下さい」

「そのあとで、お前は安彦さんの部屋へ行かなかったかね」

「参りませんとも。ちゃんと、シビンや便器の用意もしてあげて、でゝきましたからね」