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ふくいんさつじんじけん

復員殺人事件

坂口 安吾

「座談 第三巻第六号~第七号、第四巻第一号~第三号」1949(昭和24)年8月1日~9月1日、1950(昭和25)年1月1日~3月1日(未完)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,621 字 · 195 页

青空文庫

「それは、あなた、カギですもの、内側からでも、外側からでも、自由自在にあけられます。さもなきゃ、大変じゃありませんか」

「お前は、安彦さんが起久子さんを殺したと云ったね。ところが、起久子さんの殺された一時間も前に、安彦さんが誰かに絞め殺されていたのだよ」

「そんな。それは、嘘でしょう」

そう云いながら、然し、モトの全身が硬直したようであった。

「よろしい。嘘か、本当か、見せてあげよう。さア、一緒に行ってみようじゃないか。実は、私も、まだ、その部屋を見ていないのだよ」

捜査主任を先頭に、巨勢博士と私もついて行った。モトはちょッと尻ごみしたが、巡査に両側からつきそわれて、仕方なしに歩きだした。

今しも現場は、鑑識の人々が指紋をとり終り、写真も撮し終ったところであった。

安彦は寝台の上に、俯伏せになり、ヒモにまかれて何の苦もなくクビリ殺されていた。俯伏した顔をもたげてみると、汚物を一握りほど吐いている。それは殆ど消化されていなかった。

「指紋はでたかね」

捜査主任は三村刑事にきいた。

「かなり出ております」

「その女の指紋をとりたまえ」

こう云われて、モトはふるえた。