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ふくいんさつじんじけん
復員殺人事件
「座談 第三巻第六号~第七号、第四巻第一号~第三号」1949(昭和24)年8月1日~9月1日、1950(昭和25)年1月1日~3月1日(未完)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,621 字 · 195 页
しかし、精神的には、まだ、充分ではありません。恐らく、完全な異常状態なんです。催眠薬を過度に服用したあとは、そういうもので、ハタの見た目に変りはなくとも、本人は殆ど意識していません。完全に覚醒したあとでは、忘れているか、ごくボンヤリと記憶している程度なのです。そんなら酔っ払いみたいに、なんでもペラペラ喋るかというと、そうでもなく、やっぱり理性はあるのですな。まったく妙な状態です。で、医師の立場としては、まだお会いさせたくないのですが、皆さん、この訊問を非常に急いでいられる様子ですし、患者も、無自覚的ではあるが、理性がない状態ではないので、特に早目に面会をはからったワケです。これを御承知の上で、あまりクドくなく、切りあげていたゞきたく存じます。又、当人に自覚がないので、捜査の手掛りとしてはとにかく、正式な書類になりうるか、どうか、疑問ですよ。医者の私見では、正式な調書になり得ないでしょうな」
そんな妙な状態は初耳で、大矢捜査主任をはじめ、判検事も呆れた面持である。
「それは学術的に、なに状態と云うのですか」
「私は臨床的に経験しているだけで、学術語では、ちょッと分りかねますが、神経科に問い合せれば分るでしょう」