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ふくいんさつじんじけん

復員殺人事件

坂口 安吾

「座談 第三巻第六号~第七号、第四巻第一号~第三号」1949(昭和24)年8月1日~9月1日、1950(昭和25)年1月1日~3月1日(未完)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,621 字 · 195 页

青空文庫

「まア、まア、ねたまま。ねたまま。起きてはいけませんよ」

と、附添っていた院長が抑えた。

美津子はつぶらな目で巨勢博士を見つめて、

「先生。安彦兄さんは無事ですか」

巨勢博士も返答に窮した。うしろでモジモジしているのを、大矢捜査主任が、前の方へおしだして、

「巨勢君はお嬢さんとオナジミなんだから、キミが一同に代って話してくれたまえ。みんな正直に話していゝですよ」

「そうですか」

巨勢博士はすゝみでて、美津子の枕元によりそい、

「ボクはこんなことを申上げるのはイヤですがね、お嬢さんが心配していらした通りの事件が起りましたよ。しかし、早すぎましたねえ」

「いゝえ、早すぎやしませんわ。私たちの用心が足らなかったのです」

美津子は病床でいろいろと思いをはせ、すでに多くの場合を予期していたらしく、驚きの色を見せなかった。

「では、お砂糖だったのね。私がこんなになったのは?」

「えゝ」

巨勢博士はうなずいて、

「思い当りますか」

美津子はうなずいた。

「お嬢さんは、ココアを何バイおのみでしたか」

「食堂で一パイ。それから、二階へも一パイ持ってあがりました」

「それも飲みほしましたね」