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ふくいんさつじんじけん

復員殺人事件

坂口 安吾

「座談 第三巻第六号~第七号、第四巻第一号~第三号」1949(昭和24)年8月1日~9月1日、1950(昭和25)年1月1日~3月1日(未完)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,621 字 · 195 页

青空文庫

美津子はうなずいた。

「それから、しばらく起きてらッしゃいましたか」

「ハッキリ記憶がありませんの。しばらく起きて、何かしたようにも思えるし、ねむたくなって、すぐねたようにも思えるし」

「ココアを持って二階へあがってからのことを、はじめから思いだして下さい」

「二階へあがって、ハンドバッグから二枚の手型をとりだして、テーブルの上へ並べて、とりとめもなく考えながら、ココアをのんでいたのです。そう。それから、記憶がハッキリしません」

「いつネマキに着替えましたか」

「さア」

美津子は思いだせないらしい。

「しばらく、とりとめもなく物思いにふけっていたように思いますが、いつ、ネマキに着替えたかしら」

「お部屋のカギはいつかけましたか」

「お部屋のカギ?」

美津子は目をまるくした。

「お部屋のカギは……」

しばらく考えていたが、

「いつも眠るとき、カギをかけて寝床へもぐりこむ習慣ですけど」

昨夜のことは思いだせないらしい。

「外出なさるときは、お部屋のカギをかけて出ますか」

美津子は首をふって否定した。

「で、二枚の手型をテーブルの上へならべて、それから、その手型をどうしましたか」