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ふくいんさつじんじけん

復員殺人事件

坂口 安吾

「座談 第三巻第六号~第七号、第四巻第一号~第三号」1949(昭和24)年8月1日~9月1日、1950(昭和25)年1月1日~3月1日(未完)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,621 字 · 195 页

青空文庫

「しかし、殺人事件とは別に、その点も追求されて、あなたは結局告白せざるを得ないと思いますがね。なぜなら、この家の中からは、禁止品が山のように現れていますし、倉田組の倉庫はまだ開かれませんが、すでに封印されて、一両日中には白日のもとにさらされますよ。その結果は、たぶん軍事裁判、ということになるだろうと思いますが、さすれば、結局、第三国人の住所氏名も追求されるのは当然ですな」

「その時になれば、あるいは申上げるかもしれません。しかし、まだ当分のうちは、申上げるワケにいきませんな。すくなくとも、彼らが日本を去るまでは」

「それは、いつごろですか」

「私が彼らについてお話しする時が、彼らが去った時なのです。それ以外は何も申されません」

「軍事裁判に附されてもですか」

「とにかく、ここは軍事裁判の法廷ではありません」

「あなたは昨夜の夕食にココアをのみましたか」

「いゝえ」

「コーヒーか紅茶は」

「番茶をのんだゞけです。甘いものは、いたゞきません。ゆっくり食事をする時間がなかったのです」

「ふだんは、のみますか」

「のみます。それはこの家の習慣ですから」

「あなたは奥さんと仲が良かったのですか」