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ふくいんさつじんじけん

復員殺人事件

坂口 安吾

「座談 第三巻第六号~第七号、第四巻第一号~第三号」1949(昭和24)年8月1日~9月1日、1950(昭和25)年1月1日~3月1日(未完)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,621 字 · 195 页

青空文庫

悪しからずゴカンベン下さい」

「で、横浜へ泊ったのですか」

「いゝえ。横浜で費した時間は一時間ぐらいのものです。用談は三十分とかからなかったのですから。それから、すぐに東京へ、電車で行きましたが、私が下車した駅は申上げられません。京浜の一駅とだけ申しておきましょう。十二時ごろでした。そして、ふたたび第三国人に会い、そこの家へ一泊しました。これ以上申上げられないのが残念です」

「それを仰有っていたゞかないと、あなたに不利なケンギがかかりますが、それでも仰有るわけには行きませんか」

「残念ながら、申上げるワケにいかないのです」

「あなたが仰有れないというのは、まア、密貿易とか禁止品の売買とか、そういった秘密のあばかれるのを怖れてのことゝ思いますが、それによって蒙るケンギは殺人罪ですよ。こッちが、だいぶ重罪ですが」

「単なるケンギにすぎませんから、私は平静です。いずれ無罪がわかるでしょう。真犯人がわかれば、私の潔白は自然に証明されますから。私が昨日の行動をハッキリ申上げられないのは、罪悪によってゞはなく、信義によって、なんです。日本人の信義のために、これは、どうしても申されません」