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おもいちがいものがたり
思い違い物語
山本 周五郎
「労働文化」労働文化社、1950(昭和25)年9月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 44,840 字 · 88 页
かくて山治家の豪華な式は無事に済んだ。
泰三が列席したとしたらそうはゆくまい、賑わしさは増大したであろうが、各種の損失出費もそれに正比例した筈である。但し、その式が徹頭徹尾「無事」だったとは断言はできない、なぜかなら、その式の進行ちゅうに、局面を新しく展開する二つの芽が発生し、二つとも相当な力と速度で成長し始めたからである。
「あんまりだわ、あんまりひどいわ」
その芽の一つはこういう泣き声で始まった。とりもなおさず山治家の津留の叫びである、彼女は泰三を城中に拘束したことで父を非難し、知っていてその計画に反対しなかったことで母と姉と泰助とを非難した。
「たった一人きりのお兄さまの結婚式なのに、ごまかしてまで除け者にするなんて、お父さまもお父さまだけれど、お母さまだってお姉さまだってあんまり薄情だわ、泰助さんなんか石仏どころじゃない、涙も情愛もない唯の石ころだわ」
「お黙りなさい津留さん、言葉が過ぎますよ」
母親もついには怒り声をあげた。
「それもこれも泰三さん御自身の責任です、考えてもごらんなさい、祝言の式にいろいろと大事な飾り道具や高価な器物がたくさん並び、お客さまも三十幾人かいらっしゃるのですよ、もし泰三さんがいてごらんなさい、そのお道具や器物は毀されてしまうし、お客さまに対しては恥をかくし、なにもかもめちゃくちゃ