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にほんばし
日本橋
泉 鏡花
「日本橋」千章館、1914(大正3)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 88,697 字 · 177 页
」と自若として言う。
「弱った……」
「私を口説く気で、可うござんすか。まったくは、あの御守殿より、私の方が口説くには煩いんだから、その積で、しっかりして。」
「破れかぶれは初手からだ。構うもんか!……更って(清葉さん)。……」
「黙って顔を見ましたかい。」
「惚れたと云うのが不躾であるなら、可懐いんです、床いんだ、慕しいんです。……私に一人の姉がある。姉は人の妾だった。……恋こがれた若い男が有ったのに、生命にかえてある相場師の妾になった……それは弟の為だったんです。
私の父親は医師だったんだよ。……と云うお医師も、築地、本郷、駿河台は本場だけれども、薬研堀の朝湯に行って、二合半引掛けてから脈を取ったんだそうだから、医師の方では場違いだね。
広袖を着たまま亡くなると、看病やつれの結び髪を解きほぐす間も無しに、母親も後を追う。
姉は二十、私は十三、妹は十一で、六十を越して祖母さんが、あとに残った……私と妹は奉公に出たんです。
姉は祖母をかかえて、裏長屋に、間借りをして、そこで、何か内職をして露命をつないでいる。私が小僧になったのは、赤坂台町の葉茶屋だった。」