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にっき

日記

宮本 百合子

13 一九二七年(昭和二年)

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 40,068 字 · 81 页

青空文庫

十二月十六日

そのまま出てしまう。八日一つ車に寝起きした男と、このようなことで別れ、自分一種の悲しみを感じた。

ボリシャーア・モスコウスカヤに部屋なし。秋田さんの居るパッサージというのにゆく。入口狭く、玄関、いきなり階段。米川さんの部屋へ当分居候をさせられた。夜やっと小一部屋一つあって大いにたすかった。小ざっぱりして、いい。

十二月十六日(金曜)

モスクワへ来て見ると、本土の中心で生活しているロシア人は、やはり大きく、ゆったりしたところのあることを感じ、愉快だ。働いて居る女にしろ、食堂の男にしろ、ハルビンのロシアの人とは大分違う。

この部屋は小さく、窮屈ではあるが、モデルンのように、南京虫の心配なし。

○風邪急に気管支まで侵入したと見え、しきり、末期の息のような音を出す。胸と背中を湿布し、一日ホテルにとじこもる。

○夜食堂へ行ったら、アンズのような頬の感じの若い女の人盛に喋って居た。珍笑子という日本名のあるチタの人、日本語がコンラッドの仕込みでなかなか達者。これから私共の先生になってくれる由。ガウズネル、米川、秋田、鳴海さん達を迎えに来た。エスキモー風の白茶まじりのしゃれた毛皮外套に帽子をつけて居た。