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にっき
日記
宮本 百合子
21 一九三七年(昭和十二年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,646 字 · 48 页
四月十日
自分母のうしろからおじぎをする。「どうぞよろしく。」何だか妙な気がした。嫁のような気がした。
○駅で十二日の8号の寝台をとる。やっと。上。
◎父、血尿を出した。医者来る。紬の羽織にガスの絣の着物、ひげ。目鏡だけすこしまし。地方病十二指腸虫。バセドーシの似たもの。尿道がいたいと云う。「ヤイ」悲しそうな声
〔欄外に〕薬をいやがる。
四月十日
荒神さんの小山にのぼって見る。多賀子と蓬つみに出た。ここの桜は室積の桜とは大変に花の立派さがちがう。潮風にふかれて香う桜花には何か溌溂としてつよく豊かなところがあり、こういう小山の桜は花びらも薄く弱くいかにも平凡である。桜の花のこんな相違を何か感情をもって感じることを面白く感じた。
○島田川のところの河原の景色。野茨、ささやぶ、やなぎの芽、底のすきとおった水、中流では下へ、川辺では逆のように見える。
○畷道に太いみかげの棒石をつかっているところ 又セメントで肥料壺をかためているところ
○トラックを河のところで洗っている。小さい小倉服の子供が、水でぬかるみになったところへネープルのようなものを皆ころがして泣いている。