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あんこくせい

暗黒星

江戸川 乱歩

「講談倶楽部」1939(昭和14)年1月号~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 94,000 字 · 188 页

青空文庫

誰か懐中電燈を持ってきたまえ。どこへ通じる抜け穴かわからないが、ともかく、調べてみなくちゃ」

やがて刑事の持ってきた懐中電燈を受け取ると、「三島君、君も一緒にきたまえ」と言いながら、課長は先に立って、押入れの中へはいった。

その中は三方とも板壁になっているのだが、一方の隅に高さ三尺ほどの小さな隠し戸がついていて、それが向こう側へひらいている。その奥は深さも知れぬ闇だ。おそらくここは地下道の入口なのであろう。

「やっこさん、よっぽどあわてたとみえて、隠し戸の締まりを忘れて行ったのだよ。ちょっと手で押してみると、なんの造作もなくひらいたのだ。

君、用心したまえ、相手は気ちがいだからね。僕は幸いピストルを持ち合わせているから、いざといえばひけは取らないつもりだが、君は空手なんだからね。僕のうしろからついてきたまえ」

北森氏は懐中電燈をうしろの三島刑事に持たせ、自分はピストルを握って、大胆にも闇の地下道へと這いこんで行った。

懐中電燈で照らしてみると、上下左右とも石で畳んだ細い地下道で、余ほど年代のたったものとみえ、石畳はところどころくずれているし、一面に黴とも苔ともつかぬものが生え、なんともいえぬしめっぽい土の匂いが鼻をつく。