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あんこくせい
暗黒星
江戸川 乱歩
「講談倶楽部」1939(昭和14)年1月号~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 94,000 字 · 188 页
地底の磔刑
怪物のマントであった。足を隠すほど長いインバネスの裾が、石畳の上をすって、ズンズン向こうへ這って行く。
「待てっ!」
声をかけても、ひるむ様子はなかった。ここまでお出でといわぬばかりに、速度を早めて遠ざかって行く。
その黒い怪物が、かよわい、二十歳の娘なのかと考えると、現実家の北森氏も三島刑事も、地底の冷たい風が運んでくる一種異様の鬼気に、慄然としないではいられなかった。
地底の磔刑
地下道は案外短く、四、五間も進むと、突然天井も左右の壁も遠ざかって、大きな部屋のような場所に出た。
北森氏はピストルの引金に指をかけて、まっ暗な広間に立った。三島刑事もそれにつづいて眼の前の闇に懐中電燈の光を向けた。
その丸い光の中に、黒いものがこちらを向いてスックと立っているのが見えた。黒覆面の二つの穴から、ギラギラ光る眼が覗いていた。さては、曲者は二人をここまでおびき寄せておいて、手向いするつもりなのであろうか。
「手を上げろッ! でないと……」
北森氏は相手の権幕に驚いて、機先を制するために、いきなりピストルをつきつけながら、恐ろしい勢いでどなりつけた。
すると、突然、実に意外なことが起こった。