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あんこくせい

暗黒星

江戸川 乱歩

「講談倶楽部」1939(昭和14)年1月号~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 94,000 字 · 188 页

青空文庫

しばらく行くと、眼の前にまっ黒な大入道のような円塔が現われた。青年はその円塔に向かって歩いて行く。眼をそらして塔を見ると、その一階の窓にボンヤリと白いものがうごいていた。人の姿だ。どうやら女らしい。

「さては、あれが綾子さんだな。あすこで男のくるのを待っていたんだな」

少年はさかしくも頷きながら、なるべく塔に近い木の茂みをえらんで、身を隠し、じっと監視をつづけた。

青年はもうその窓の下に立っていた。かすかにささやきかわす声が聞こえてくる。むろんその意味はわからないけれど、白い人影は窓框によりかかり、青年は背伸びをして、何かヒソヒソと話し合っていた。

二たこと三こと話し合って、しばらく声がとぎれたが、その次に聞こえてきたのは、今までとは違って、低いながらも妙に烈しい口調であった。

「おやっ、畜生っ」

ハッキリわからないが、なんだかそんなふうに聞きとれた。

そして、その次の瞬間、小林少年はいきなり脳天をうちのめされたような衝撃を感じた。

突如として、どこからか銃声のような恐ろしい音が響いたのである。ハッとして、あたりを見まわしたが、別に怪しい人影もない。