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うんせききこう
柳宗悦 民藝紀行
柳 宗悦
柳宗悦『柳宗悦 民藝紀行』。同一底本的分册已合并为一书。收入:雲石紀行、沖縄の思い出、思い出す職人、樺細工の道、北九州の窯、現在の日本民窯、小鹿田窯への懸念、全羅紀行、台湾の民芸について、多々良の雑器、地方の民芸、苗代川の黒物、日田の皿山、北支の民芸(放送講演)、益子の絵土瓶、蓑のこと、野州の石屋根、陸中雑記。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 133,050 字 · 276 页
それよりも南部の人たちの家庭にはなくてならない品物である。
「この村は不思議な村です。日清、日露の役に随分兵隊を送りましたが一人だって戦死者が出ないのです。こんどでもきっと一人も死なないでしょう」。それは昭和十三年のことであった。村の人がそういって吾々に話しかけた。何か運命について疑いを有たない信心が見えた。
「おしら様をおがませて頂けないでしょうか」。吾々の仲間がそういい出した。「おしら様」というのは、神秘な土俗的な神様で、陸中のある村ではこの信仰がまだ厚い。人間の運命を司る世にも不思議な力であって、誰もこの神を怖れ崇める。
「他人様にお見せすべきものではありませんが、貴方がたには特別お出し致しましょう」。そういって主人が奥の方へ入った。暫くして携えて来たのは、新しい筵である。吾々に縁に腰かけるようにと持ち出したのだと考えた。だがそうではない。おそるおそる不思議なものを抱えてその筵の上に座らせた。丈は一尺ばかり、細く裂いた布が、総のように上から垂れ下り、それがほとんど丸い形にまでふくれている。聞けば年毎に一つずつ裂布を、お着せするというから、おそらく百余年もたっているに違いない。